ノンフィクションな数字

元祖FP野田 真が数で探るマネー未来図第40回 国債依存度が高まる生保運用は本当に大丈夫?

日本の生保運用の4割以上が国債だ。日米欧で財務不安が強まっているにもかかわらず、その割合は増加中。”守り” のマネー商品である生保が、実は最大のリスク商品である可能性はないか?

今年3月末、国内生命保険47社の運用資産313兆円のうち日本国債が132兆円を占め、5年連続で過去最高を更新したという。バブル期前後には「ザ・セイホ」などと呼ばれ、外債や株式、不動産等への投資で世界的に注目を浴びていたが、少なくとも運用面ではその面影はなく、すっかり “内向き” になっているようだ。主な背景は、2012年3月期からの支払い余力算定基準の厳格化だ。運用に一層の安全性が求められるため、株式などの価格変動リスクが相対的に大きい資産を圧縮し、低リスクとされている国債の運用が増えたという構図だ。

一方、銀行の国債保有も増えている。今年4月末の国内銀行全体の保有残高は158兆円超で過去最大。総資産に占める割合は2割に近づいているという。

こちらの背景にあるのは、預金の有力な振り向け先が見当たらないことと、国際的な財務健全性規制の強化(バーゼルⅢ)。生保の場合と似ている。

さらに、直近では米欧の財政不安が膨らみ、消去法的に日本円(当然国債も)が買われるという現象も加わり、東日本大震災対応の復興国債の発行があっても、増税などによる財源の確保にメドが立てば、さほど国際的な信用力に傷もつかず、乗り切れるのではないかという観測が有力だ。しかし、本当に大丈夫といえるのだろうか。

国債といえば、最近は、部分的なデフォルト(債務不履行)に陥ったとされるギリシャなどPIIGSの国債(ひいては欧州全体の信用力)や、財政不安で格下げされた米国債の話題が目立つ。しかし、政府債務の対GDP(国内総生産)比を見ると、日本は220%超とギリシャ(同142%)や米国(同91%)をはるかに上回り、先進国で最悪だ。

また日本国債は、国内保有が95%にも及び、外国勢が7割を占めるギリシャや半分以上の米国とは事情が違い、簡単には売られないとよくいわれるが、そういう状況は今後も長く続くものだろうか。続かないという見方が、一部評論家の言葉とは違う実質的な形で出始めている。

25兆円という最大級の保有者でもある三井住友銀行が最近、償還期限が10年を超える超長期国債をすべて売却したという。超長期国債も含めて今後も保有を増やす構えの生保とは明らかに異なる動きである。

日本国債を多く保有する金融機関の資金の出し手は企業であり家計だ。企業が海外シフトの過程で投資を増やす、高齢化で家計の貯蓄率が下がり貯蓄そのものが減る……という(比較的確率が高い)話になれば、日本国債を支える資金は細る。

9年後の20年度には、海外勢の日本国債保有が2割を超えるという銀行系シンクタンクの試算もある。現状のままだと数年から10年ほどのうちに、今は安定的な日本国債が、大きな価格変動(値下がり→金利上昇)に見舞われる可能性があるのだ。

生保に限らずすべての長期・超長期国債に多くを依存する運用は不安定さを増す。国自体や金融機関、保険会社の信用力も揺れ動くだろう。長期の変動金利型住宅ローンは、組むだけでとてつもないリスクを抱え込むことになる。個人の運用上、「コレを持っていれば安心」といった話は、どれもこれも気休めにすぎないように思われる。


野田 誠(のだ まこと)

日本のファイナンシャル・プランナーの先駆け。
マネー業界、金融商品の変遷を熟知しているだけに、投資家にとっていいものと悪いものをバッサリと斬り分けてくれる。



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この記事は「WEBネットマネー2011年10月号」に掲載されたものです。


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