ノンフィクションな数字

元祖FP野田 真が数で探るマネー未来図最終回 「貯蓄から投資へ」は「投資から貯蓄へ」に…

普通預金の残高が増えている。世界中のどこにも投資したいモノがない、不安…。もちろん、金利などまったくアテにしていないだろう。この個人の判断を否定できる人はいるだろうか。

8月25日付の某紙トップに「個人マネー滞留、一段と」と題し、この夏、国内銀行の普通預金などの残高が昨年夏に比べて6%伸び、200兆円に迫ったと報じられた。東日本大震災の影響で、すぐ引き出せる普通預金に預ける傾向が強まり、所得・雇用への不安から手元資金を増やす動きもあるという。4〜6月の家計の可処分所得は、前年同期比で4%減だそうだ。

今年は郵便定額貯金が大量満期を迎える時期に入っており、同時に個人向け国債5年物の初償還もあって、株式や投資信託など投資型商品への資金流入期待が高まっていたが、大勢としてはどうやら空振りに終わったようだ。

これまで金融や投資に関わる業界は、政府が提唱してきた「貯蓄から投資へ」を追い風にしてきた。特に最近は、株式や投信、商品などと同列以上の扱いでFX(外国為替証拠金取引)を強力にプッシュしてきたから、こういう傾向は残念かもしれない。

いわゆる「投資」を何らかの形で推奨する立場の方々は、やはりまた預貯金に向かう人々の “リテラシーの低さ” を指摘し、「日本人はリ
スクを取らない」と嘆き、「長期投資には絶好の仕込み時」などと声を大にするのだろう。

しかし、もっと大きな目で見れば、預貯金に向かう行動はそれなりに合理的な判断だと思う。それはまず、世界を覆う終わりの見えない金融経済危機の中で相対的に「当面は安全」と、世界中の投資家が円やスイスフランを選び取っている行動にも通じるのではないか。

さらにまた、震災および原発事故の惨禍を目の当たりにした人々が、「自分だけがトクをする、助かる」行動のむなしさ、つまらなさに思い至り、言わば「金融」的土俵から下り始めた表れだとすれば、望ましい傾向とすら考えることもできる。

それまで、預貯金と保険以外はあまり眼中になかった私たちが、いわゆる「投資」を意識し始めたのはせいぜい四半世紀前のことである。根源は米国の「金融覇権化」にある。必ずしも人々の幸福に合致しない「効率」や「合理性」の飽くなき追求が始まり、私を含むファイナンシャル・プランナーもその流れの端っこに生まれた。その帰結が収拾のメドの立たない金融危機、現体制危機だろう。

伝統的な「金融」の役割、すなわち本当によりよい未来を開く可能性のある事業に必要な資金を振り向けることを否定するつもりはないが、いま盛んに言われる「FXがどう」「金はまだ買いか」「長期投資がベスト」などなどの声には何ともいえないむなしさを感じる。

たとえば、FXは本人以外の生活経済上の未来を開くことはできるのだろうか。株や投信には企業や事業を育てる、社会貢献になる一面があるにしても、その見方は一種の「免罪符」、儲けたいという強い欲望をオブラートに包んでいるにすぎないのではないだろうか。投資家や投資を勧める人たちが、預貯金や国債に比べてはるかに有利な現行税制を放置させ、強化さえさせようと動くのも社会貢献の一環なのだろうか。

ガラガラポンの時代だと思う。大切な資金を狭い旧発想の投資の世界に閉じ込めてしまうより、いつ何時、どのような対象にも振り向けられる状態にしておくのは正しい。


野田 誠(のだ まこと)

日本のファイナンシャル・プランナーの先駆け。
マネー業界、金融商品の変遷を熟知しているだけに、投資家にとっていいものと悪いものをバッサリと斬り分けてくれる。



—–
この記事は「WEBネットマネー2011年11月号」に掲載されたものです。


バックナンバー

今、個人投資家が「買いたい株+売りたい株」

買いたい株

1【3912】
モバイルファクトリー
2【3981】
ビーグリー
3【3661】
エムアップ
4【3807】
フィスコ
5【6753】
シャープ

売りたい株

為替チャート

オススメ証券会社

株価検索

株価検索