特集

亀井幸一郎が金の魅力と今後の市場動向を解説GOLDの風(2017年6月号)

米国の利上げは6月との見通しが大勢を占めていた市場。しかし、急きょ3月実施に舵を切ったFRB(連邦準備制度理事会)。臨機応変な対応の裏には、米国内外の政治的不透明さゆえに、好環境を捉えた方針変更があったと筆者は指摘する。

利上げ前倒しのFRB。金市場の関心は政治リスクに移行

ドル建て金価格の方向性を決める大きな要素となっている米国の金融政策。3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では、昨年12 月の利上げに次ぐ2会合目での追加利上げを決めた。6月との見方が大半を占める中での利上げだ。3月に入って議長、副議長をはじめとする複数のFRB高官が利上げ時期が迫っていることを相次いで示唆していたため、利上げ自体は、わずか数日で織り込み済みに。ただし、〝その先〞を読むのが市場の常、金市場では利上げペースの加速を見込んだファンドが前のめりに売りポジションを増やした。その結果、FOMCの声明文発表前日には、金は1200ドルを割れを見てしまう。

しかし、 15 日に声明文とともに発表された見通しでは、2017年の利上げ回数は前回 12 月と同じ3回。つまり、利上げ加速の見通しは示されなかった。しかも、政策金利、インフレ率の見通しに目立った上方修正はなし。FRBのイエレン議長は、記者会見でトランプ政権の財政政策については、「タイミングや規模、その性質などをめぐり、大きな不確実性がある」として「何が起こるかを見極める十分な時間がある」とした。そもそもトランプ政権の政策実現度や通商外交政策に不透明感が強い中で、期待先行で株価が堅調に推移し、足元で発表される米国経済指標も強気のものが続く今のうちに利上げしようということだったのだろう。上げられるときに上げておこうと、急きょ好環境に飛び乗ったものと思われる。つまり、想定していた利上げの前倒し実施であって、利上げの加速を意味するものではなかった。

金市場では、思惑外れのポジション(売り建て)の巻き戻しが起こり、価格は3月15 日を節目に反転上昇。結局、この金融イベントを超え、金市場の関心事は欧米での政治イベントに本格的に移る。英国がEU(欧州連合)に正式に離脱を通知し、厳しい政治交渉が現実のものとなった。フランスでは5月7日に大統領選挙の決選投票を控え、懸念される極右政党・国民戦線のルペン党首の支持率の推移に沿って市場も揺れるだろう。仮に同党首が勝利しなくとも、その勢力の伸長は欧州における既存政党への不満の大きさを表し、政治的不安定さを印象づけるのではないだろうか。この段階でもトランプ政権がいまだ政策の具体性を出せないでいたならば、不透明性はさらに高まり金価格を刺激すると思われる。そうなれば、FRBを3月に前倒し利上げへと走らせた真意を市場は知ることになりそうだ。


マーケット・ストラテジィ・ インスティチュート代表
亀井幸一郎
KOICHIRO KAMEI

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社であるMMI、金の国際広報・調査機関であるWGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆・講演など幅広く活躍中。



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